チャンネルはそのまま!プロデューサー嬉野雅道コメント

札幌という、一地方のテレビ局であるHTBが、開局50周年を記念して自ら制作いたしました
連続テレビドラマ「チャンネルはそのまま!(全5話)」が、このたび民放連テレビドラマ部門の最優秀賞を受賞し、
加えて民放連テレビグランプリまでをもダブルで受賞いたしましたことは、この作品に関わった者として、たいへん嬉しいことでした。

なにしろ民放連の賞ですから、対象作品は日本中の民放すべてが去年1年間に制作した全番組ということになるわけです。

その中でもドラマは、制作する側に熟練の技と技量の裏付けが伴わなければクオリティの高いものにはなりません。
となれば、当然テレビドラマを伝統的に作り慣れている東京のキー局各社が作る横綱級のドラマが最大のライバルです。
そんな中で今回、HTBは、テレビドラマ部門の最優秀賞を受賞したばかりでなく同時に最高賞であるテレビグランプリまでも獲得したのですから、
これは、なみいる横綱級にクオリティーで勝り、かつ、掲げたテーマも、まさに、

この今の時代を生きる者が見たときに社会の虚を突き人を励ますステキに社会派な作品であったということになるわけです。

その上でなお全体の演出のタッチは見事に一貫してコメディードラマのテイストを保って楽しく可笑しく軟らかく
これは世代を問わず、誰もがドキドキワクワクしながら毎回楽しんで見ることができる、まさにテレビ本来の姿を今に取り戻すことに成功している作品だ」と、
選考委員たちに評価され、去年、民放で作られた番組の中で、優れて一番だったということなのでございますから、これはもう気持ちのいい快挙です。

ドラマの中に出てくる「バカ枠採用」とはなんでしょう。バカ枠の新人とは、いったいどんな人間だというのでしょう。

たんに人が集まるだけでなく、上下関係のもとに集められる組織という場所で、人間は、知らず知らず周りの空気を読むことに長けてしまいます。
空気を読む、それは結局、保身からくることです。もちろん保身は生きる上で大事なことでもあるでしょう。
でも、その保身も行き過ぎると空気ばかりを気にして自分の頭で考えることをおろそかにし始める。

責任を取りたくなくて自分で判断することに臆してしまう。こうして独立した生き物としての当たり前の行為を手控えはじめれば、

1人1人が独立の気分を失ってゆき徐々に生きる喜びを手放すことになりますから、気づけば組織は硬直して活気を失ってしまうのです。
でも、そうなりがちな人間の中にあって、周囲の空気を一切読まず、注意されることを恐れず1人で突出していこうとする奴がいる。
簡単に言えばそれが「バカ枠」。けれど、そいつはバカではないのです。ただ自分の思いつきに集中するあまり周りが見えていないだけなのです。
そいつは、自分の中に湧き出たやりたいことが具体的にあるから、やってしまいたくなり、自分の判断で走り出してしまうだけなのです。
そんな人間はやりたいことに集中するから周りが見えていない。だから空気なんか読もうともしない。だから保身なんか考えたこともない。
だから周囲からの批判も大きいでしょう。でも、そばで見ているとなんだか楽しそうなのです。

だからそいつのそばに居ると、その「楽しそう」が体温のように伝わってくる。
つまりバカ枠が、組織の中にいると周囲を巻き込み騒動を起こすけれど、そいつの「楽しそう」が伝わるだけに、
結果的に硬直しがちな周囲の人間の心に、独立した気分をもう一度呼び戻す役割を知らず知らずに果たすのです。
「チャンネルはそのまま!」の主人公であるバカ枠採用の新人・雪丸花子は、だから周囲の先輩や上司に怒られながら、
でもそのことで硬直しがちな組織を結果的に救うのです。だからHTBが制作した「チャンネルはそのまま!」は、

今後、広く長く見られることで日本そのものを救って行くのだと私は信じるのです。
そんな作品が公に選ばれてグランプリというテレビにおける最高の賞を受賞したのです。
ということは、もう硬直した組織の中で独立の気分を失って生きて行くのは嫌だ、という時代の機運が今、

静かに湧き立っているからのように私には思えました。最高のドラマを、地方のテレビ局が作る。

つまり、どんな場所にいても良いということです。場所はもう考えるのはやめましょう。
ただ、今の時代を生きながら、今の自分が切実に感じていていることに向き合って、作品を自分ごとにする、

それだけがテレビ番組のテーマに一番相応しいものになるのだと思います。
自分から始める。常に考えなければならないのはそれだけだと思います。

嬉野雅道(miruca在籍23年)